原子力空母1隻で原爆数千発分以上

 軍事施設化の大きな問題点として、原子力空母の危険性が上げられます。実戦において原子力空母は戦場の近くに配備し、艦載機はそこから戦場に向かいます。アメリカの原子力空母エンタープライズ号がイラク、アフガニスタン戦争に参戦し、多くの民間人を伴う犠牲者を出したことは記憶に新しいと思います。

 更に放射能の危険性があります。アメリカ海軍のニミッツ級原子力空母の推定熱出力は90万kW、原発に換算すると30万kWとなります。原発は熱エネルギーの3分の2を海に捨てているからです。鹿児島の川内原発1号機、2号機の出力の3分の1に当たる訳ですが、だからといって危険度が3分の1という訳ではありません。原発の燃料は低濃縮ウランであり、ウラン235の含有率は僅か3%ほどです。ところが、原子力空母や原潜(原子力潜水艦)はウラン235の含有率90%以上という、広島に落とされた原爆に匹敵する高濃縮ウランを使用しています。更に狭い船体内で炉心設計に余裕が少ない、放射能防護のための格納容器が存在しない、船の上で絶えず振動衝撃にさらされる、海難事故による原子炉の破損の可能性、軍事活動のため無理な出力調整を強いられる、原子炉と高性能火薬との同居、攻撃による炉の破壊の可能性等々、その危険度は計り知れません。これまでに何十隻もの原潜が核兵器と原子炉の膨大な核燃料を積んだまま海に沈んでいます。小型の原潜1隻で広島型原爆数百発分以上、大型の原潜や原子力空母になると数千発分以上にも当たります。つまり、馬毛島の軍事施設化を認めることは、原爆や原発より遥かに危険であり、テロの対象ともなり得る原子力空母を認めることであり、岩国への原子力空母配備をも認めることになります。

 旧ソ連は旧式化した原子炉を少なくとも日本海に4基、北極海に17基投棄し、放射性廃棄物も多数海洋投棄しています。また廃艦になった原子力潜水艦を、核燃料棒を積んだまま、何十隻もウラジオストックに放置しています。旧ソ連以外の国家での原潜事故は、各国が原潜の動き自体を第一級の軍事機密としているため殆ど不明です。現在分かっている、主な軍事原子力事故は以下の通りです(ウィキペディア「原子力事故」より抜粋)。

旧ソ連原子力潜水艦等
1965年2月 原子力砕氷艦「レーニン」の原子炉の冷却水が失われ暴走。多数の死傷者を出した。事故を起こした原子炉は2年後に北極海へ投棄した。
1968年3月8日 ハワイ沖でゴルフ型潜水艦K-129が沈没。核ミサイル3発搭載。
1970年4月11日 ビスケー湾水深4,700m。ノベンバー級K-8沈没。52名死亡。
1970年6月 エコー2型原子力潜水艦が米「トートグ」と衝突、ソ連側が沈没。
1971年3月 ソ連沿岸で米ソ原潜が衝突、詳細不明。
1974年5月 ソ連沿岸で米ソ原潜が正面衝突した。
1978年1月24日 原子炉を搭載した海洋偵察衛星「コスモス954号」がカナダ北西部に墜落。広範囲に放射能を帯びた破片が飛散。カナダに対し損害賠償として300万ドルを支払い。
1985年8月10日正午頃 エコー2型K-431。ウラジオストック近郊チャジマ湾の船舶修理工場で燃料棒交換中に、原子炉の誤操作で炉心の核反応が高まり原子炉が爆発した。10名が即死、290名が被曝した。500万キュリーの放射能を持つ放射性の塵と、200万キュリーの放射能を持つ放射性の希ガス類が流出し、北西30kmに渡り拡散したとされる。
1985年12月 ウラジオストック近郊で冷却水漏れとメルトダウン事故が起きた。
1986年夏 ヴィクター級原子力潜水艦でメルトダウン事故が起きた可能性が疑われている。
1986年10月9日 バミューダ諸島沖でヤンキー級原子力潜水艦K-219に何らかの事故が発生し、米国沖で火災により沈没した。この艦は核ミサイルを搭載しており、核弾頭34基も海中に没した疑いがあった。
1989年4月 ノルウェー沖1,685mでマイク級原子力潜水艦K-278「コムソモレッツ」で火災が発生し沈没した。40数名が死亡した。核兵器2個が海没したとされる。
1993年燃料棒交換時に使用済み核燃料を入れてしまったため、数名が被曝した。
2000年8月 オスカーII級原子力潜水艦の「クルスクK-141」(18,000t)が、炉心に約2トンの核燃料を搭載したままバレンツ海の110mに沈没した。118名が全員死亡した。

欧米原子力潜水艦
1963年4月10日 米パーミット級原潜「スレッシャー」、大西洋ニューイングランド沖2,500mにて沈没した。原子炉緊急停止。1962年6月の衝突事故と海面下の内部波の関与が疑われる。129名が死亡した。後の潜水調査で、残骸からコバルト60が検出されている。
1965年5月22日 米スキップジャック級原潜「スコーピオン」、大西洋3,000mにて沈没した。沈没原因の詳細は不明である。核兵器2個搭載。99名が死亡した。
1994年3月30日 仏リュビ級原潜。トゥーロンから80km。蒸気爆発のため、10名が死亡した。



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馬毛島の自然を守る会・屋久島