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ヤッタネ!通信1号 |
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1999年11月20日発行
ヤクタネゴヨウマツ調査隊事務局
手塚 賢至
〒891-4203
鹿児島県熊毛郡上屋久町一湊白川山
TEL&FAX0997-44-2965
∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽君よ、死に絶えることなかれ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽
ヤクタネゴヨウ(Pinus armandii var
amamiana)は屋久島と種子島にのみ分布する日本固有の五葉松である。日本版レッドデータブック(絶滅の危機にある動植物リスト'89)には絶滅危惧種と記載され、種子島での自生はおそらく100本を下り、屋久島では三分布地に1000〜2000本と推測されている。特に世界自然遺産登録地でもある最大分布地、西部瀬切地区で見られる枯死木の姿は痛々しい。今もその減少は急速に進み、植物の宝庫と名高い屋久島で最も絶滅の危機にある種といわれている。しかし、この現状は正確に調査・把握されていない。このようなヤクタネゴヨウの現実を前にして「ヤクタネゴヨウマツ調査隊」(略称ヤッタネ!調査隊)は'99年度全労済環境問題活動助成を受け活動を開始した。申請の案件名は「ヤクタネゴヨウの保護をめざす生体木調査」である。私達はまず現状を正確に知る必要があろう。島内の分布地をくまなく調査しそのデータを、国や大学の研究者、研究機関に開示し、この種を後世まで残す保護・保全の方法が確立され、早急な対策がとられるための一助になることを活動の目的とするのであるが、そのためには、民・官・学の力を結集して協働し、事にあたらなければ不可能である。現地での実際の調査活動は島の住民、地元のメンバーが主ににない行うが、この問題に取り組む専門的研究者や研究機関の指導を受け、行政庁との共調もふくめ信頼度の高い調査をめざしたい。この関係性は屋久島にとどまることなく種子島まで視野に入れた活動へと展開していくことだろう。少なくともこの異なる二つの島を、この風前の灯のような樹種がしっかりと結びつけていることは確かなのだから。生物多様性の重要さが益々問われながら、種の炎は地球上からひとつひとつ急速に消えつつある。ともあれ私達の目の前にはヤクタネゴヨウマツだ。間にあうかあわぬかはわからない。あるひとつの種の絶滅という主題をもとに、ヒトがそれぞれの持ち場で、それぞれの壁を打ちはらい、純粋に行動を起こすとき、未来はいくらか明るい兆しを見せてくれるのではないか。ヤクタネゴヨウが、今は無きものとして昔話の中に生きるのでなく、その力強く美しい姿をいつまでもこの地の上にとどめておけますようにとささやかな願いを記して調査活動開始の挨拶と致します。
●調査隊新聞記事
まず9月18日南日本新聞屋久島支局より発信。次に9月24日読売新聞東日本版夕刊。これは9月21日、記者、カメラマン2名が来島され取材を受けました。紙面ではカラー写真で掲載されました。つづいて9月26日毎日新聞鹿児島版、9月27日朝日新聞九州版と、各紙に載りました。取材に応じていただいた屋久島森林環境保全センター、森林総合研究所遺伝学研究室、および金谷整一さん、野間直彦さん、それに調査隊のメンバーの皆さん、ありがとうございました。
南日本新聞 1999年(平成11年)9月18日
ヤクタネゴヨウ守ろう
屋久島
種子島と屋久島だけに分布する絶滅危ぐ種ヤクタネゴヨウを保護しようと、屋久島の住民15人が「屋久島ヤクタネゴヨウマツ調査隊」(手塚賢至代表)を結成し、屋久島の生体木調査に乗り出す。正確な分布調査は今回がはじめて。
一回目の調査は二十六日。全労済の環境問題活動助成金を活用し、約一年間かけて島内三地域に分布する生体木を調査する。これまでは遺伝学的な調査が多く、生態を含めた今回の調査は保護のための基礎資料となる。ヤクタネゴヨウはマツ科の日本固有変種。森林総合研究所によると、屋久島には三ヵ所の地域で約千〜千五百個体、種子島にはほとんどが孤立した状態で約百個体が残存していると推定される。
調査を指導する野間直彦滋賀県立大講師は「ヤクタネゴヨウは研究者が少なく、研究態勢も資料も十分でない。今回の調査は、住民の保護意識との両面で意義がある」と話していいる。
朝日新聞 1999年(平成11年)9月27日
希少マツ調査団発足
世界遺産の島に指定されている鹿児島県・屋久島で絶滅寸前といわれマツ科の植物ヤクタネゴヨウマツを保護するため地元有志による調査団(手塚賢至代表、15人)が発足した。調査団は一年間の予定で二十六日から分布地域と個体数の特定、個体のサイズ、健康状態について調査を始めた。
ヤクタネゴヨウマツは屋久島と隣の種子島にしか生息していない。
∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽ヤッタネ!調査隊に参加して∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽
水野
洋子
山道を歩き五葉松を探し、計測したり本数を数えたりの調査ぐらいに考えて参加した私にとって、去る九月二十六日第1回ヤクタネゴヨウの調査は予想外のものでした。道なき山の斜面を這い登り、かなり専門的に測量をし、杭を打ったりと、初めての事ばかり、私は何のお役にも立てなかったのですがとても貴重な体験をさせていただきました。
一緒に調査に加わった当宿のお客様はヤクタネゴヨウの第1号を仰ぎ見た瞬間涙を流しました。それ程豊かな感性もさることながらそれくらいヤクタネゴヨウの大樹は人の心を捉えたのだと思います。
大岩を跨いで這っている根、その窪みにやどる苔の水分を滋養として生きている稚樹、これらを見つけた感動は今もはっきりと映像として瞼の奥にやきついて離れません。どうか無事に成長しますようにと、祈らずにはいられませんが金谷整一さんのお話ではあまり長い時を生き延びれないとか、、、多分近親結婚のたぐいで人間社会と一緒でヤクタネゴヨウの未来も厳しいのだと痛感しました。自然が自然のままに生育出来る環境を守ってやる事又未来にきちんと残す事は私達の大切な課題と思いますが、絶滅に瀕している色々な大切なものの一つ、ヤクタネゴヨウに生き延びる為の手助けをしてあげなければとの思いを強く持ち、第1回調査は一人の怪我人もださず、大変な中にもここちよい気分を与えてくれ無事終了しました。
苔の水滋養となして立つ稚樹の
寿命(いのち)永かれとおもわず祈る
風媒花伝
お知らせ・情報・風のたより
∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽ヤッタネ!調査日案内∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽
ヤッタネ調査隊の調査日は毎月第3日曜日です。10月は17日(日)に10名で行い、ひとつの尾根の調査が終り、ひと尾根全体の正確な位置図と全容が明らかになりました。次号にて紹介致します。11月は21日(日)、12月は19日(日)です。参加される方は前日までに事務局へ連絡下さい。人手があればあるだけ調査ははかどります。ぜひあなたも御参加下さい。
全労済の助成事業とはどのようなものなのか、資料より抜粋しかんたんに紹介します。
高齢化社会問題と環境問題に分れ、もちろんヤッタネ!調査隊は環境問題活動助成に応募しました。
対象となる活動と審査基準を見てみます。
対象となる活動および研究
(1)活 動 民間団体およびボランティアグループによる、調査・研究
@ 自然環境の保全およびその回復をはかる活動
A 野生生物を守る活動(生息環境の保護を含む)
B 交流集会、シンポジウムの開催および活動記録、ガイドブックの作成
審査基準
@ 身近な自然環境の保全、国内の野生生物を守る市民的な活動や調査研究を重視します。
A 助成の必要性、緊急性が高い活動、独自性・将来性の高い活動や調査研究を優先します。
(今年度は活動助成応募132件、審査の結果、52件が決定されました)
ちょっと長めの
編集後悔記
9月26日の第1回調査後通信発行を思い立ったものの、なれぬことで遅々として進まず、10月中に発行の心づもりでしたが、もうすでに今日は11月20日。明日は3回目の調査日と相成りました。まがりなりにも形になったとはいえ、もっと早く発行すべきであったと後悔は尽きません。通信作りにあたり、まずは調査隊のシンボルマークがほしくなってデザインを優水工房にお願いしました。御覧のとうりのはつらつとしたかわいいヤッタネ君が出来て、それと同時に合言葉もおのずと生まれ出てきました。(こういうことにはすかさずアイデアが湧くのです。近日中にはヤッタネ君シールも出来ます。)ヤクタネを略してヤッタネ!です。五葉のように指を五本広げてヤッタネ!と声にすれば表紙の写真のようになるのです。まあこんなことは調査の内実とは何の関連もないのでしょうが、とにかく地道で苦労の多い調査に少しでも笑いというか軽やかな精神というか、そのような気持を大切にして、あまりかたひじ張りすぎぬように活動を続けていきたいと思っています。通信のタイトルロゴは松尾彩子さんの作です。彩子さんは埼玉県飯能市にある自由の森学園高校の3年生。秋休み(というのがこの学校にはあるのです。)を利用して10月の調査に参加された折、描いてもらいました。水野洋子さんには9月の調査後さっそく感想文を寄せていただいたのに発行が遅れてごめんなさい。2P〜3Pのイラストは手塚田津子さん、4Pの球果のイラストは手塚みおさんの作。ささやかな4ページの通信ですが、いくつもの人の手が重なりあって出来ています。とにかく皆さんに伏して感謝致します。ヤッタネ!調査隊では島内外の賛同者を募っています。調査に参加できる、できないは問いません。ヤクタネゴヨウに関心を抱き、想いを共有していただけるならどなたでも参画してほしいのです。御一報下されば登録させていただき、ヤッタネ通信をお届けします。 手塚 賢至
ヤッタネ!調査隊は「全労済」環境問題活動助成を受けています。
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