******ヤクタネゴヨウ講演会******
 林野庁森林総合研究所九州支所昆虫研究室の中村克典さんと林野庁森林総合研究所集団遺伝研究室の金谷整一さんが来島し、ヤクタネゴヨウについて講演されました。

 中村さんは「ヤクタネゴヨウと松喰虫」について話されました。松喰虫被害として知られる松枯れは、マツノザイセンチュウという体長約1mmの線虫が、マツノマダラカミキリという昆虫によって死んだ松から生き残っている松へと運ばれ、数百から1千頭程度の線虫を移されると死んでしまう病気です。しかし松の中でもこの病気に弱いものから強いものまでいろいろあります。マツノザイセンチュウは元々北
  屋久島環境文化村センターレクチャー室
米から輸入されたパイン材についてやってきたものでした。つまり北米では元々いた訳で、北米の松はこの線虫に対して耐性があります。しかし日本のクロマツなどは特に弱く、次々に松枯れで死んでいきます。ヤクタネゴヨウはどうでしょうか?線虫を移す実験結果では最終的には全て枯れましたが、クロマツなどに比べて相当長い期間持ち堪えることが出来ました。ヤクタネゴヨウはこの様にかなり耐性が強いので、自然の状態では少しくらい線虫を移されても持ち堪えることが出来るのかも知れません。しかし実際立ち枯れになっているヤクタネゴヨウもありますので、それが線虫に因るものかどうか、これからも調査を続けていく必要があるでしょう。

 金谷さんは「絶滅の危機にあるヤクタネゴヨウ」について話されました。ヤクタネゴヨウは船材や建築材として古くから利用されてきました。種子島では江戸時代に薩摩藩種子島氏によって大変厳しく保護、管理されていました。しかし明治時代以降は丸木船の材料として、終戦後は建築材として多くのヤクタネゴヨウが伐採されてしまい、現在では種子島に100本、屋久島に1500本ほどしか生き残っていないと推測されています。更に立ち枯れなどで本数が急激に減少しており、絶滅の危険性が高いことから、環境庁によって「絶滅危惧種」に指定されています。生態系を飛行機に例えると、その飛行機が飛び続けるには全ての部品が付くべきところに付いていなくてはなりません。ヤクタネゴヨウもその一つです。飛行機のネジが一本また一本と外れていけば、いつかその飛行機は落ちてしまうでしょう。私たち人間も生態系の一員なのですから、そのためにも一種一種の生物を大切にしてしていかなくてはならないのです。

 またヤッタネ!調査隊隊長の手塚賢至さんからも、スライド上映しながらの活動報告がありました。これまで行われてきた調査への参加者は延べ210名を越えました。生木の正確な位置図と個々のデータが着々と蓄積さえつつあります。

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