南日本新聞 2016年(平成28年)7月29日 金曜日 1面
三反園鹿県知事
40年超運転認めず
来月にも停止要請 就任会見で明言
 鹿児島県知事選で初当選した三反園訓氏(58)が28日、公選制後19代目の知事に就任した。歴代8人目で初の民間出身。三反園知事は同日の就任記者会見で、九州電力川内原発(薩摩川内市)で運転開始から30年を超えた1、2号機について、「(運転は)40年が基本。廃廃炉に向けて努力する」とし、運転延長を原則認めない考えを明らかにした。伊藤祐一郎前知事は、60年までの運転延長を容認する発言をしていた。

川内原発を考える
 三反園知事を会見で、「将来的てはなく、今から原発に頼らない社会を目指していく」と強調。熊本地震により県民に不安があるとして、川内原発の周辺を視察した上で、8月下旬から9月上旬をめどに、「いったん停止して再点検・再検証すべきだと九電に強く申し入れる」と改めて述べた。
 また、公約に掲げた原発問題を検討する委員会の設置を急ぎ、人選を進めるとした。近く検討委が設置されれば、現行避難計画の再検証のほか、今秋から実施予定の定期検査後の原発再稼働や、1、2号機の廃炉についても協議するという。
 2011年の東日本大震災に伴う東京電力福島第1原発事故を受け、伊藤前知事が行政手続きを凍結した3号機の増設計画については、「県民の思いを考えれば難しい」とし、自らも進めない方針を示した。(江口淳司)

改革姿勢を強調 就任式
 三反園訓鹿児島県知事は28日、就任式や会見に臨み、県職員と一体となって改革に取り組み、県民が主役の県政実現を目指す姿勢を強調した。就任式は県庁講堂であり、職員約700人が出席した。三反園知事は「一緒に新しい鹿児島をつくろう。みなさんの力で鹿児島を、前へ前へ進めよう」とあいさつ。夢、希望、勇気、創造の四つをキーワードに挙げ、鹿児島を活性化するため前例踏襲主義をやめ、知恵を出すよう意識改革を求めた。
 会見では、県庁内に鹿児島を元気にする意見を出し合う「活性化委員会」を設ける方針を示した。「日本一がこれだけある県はない。観光、農畜産物、人も一流。所得を上げ、元気な鹿児島をつくり活性化するアイデアを出してもらう」と語った。課長級の職員で構成する見通し。
 このほか、車座対話を重視しどこへでも出向くという意味と、平たんで偏りがないことを意味する英語フラットをかけて「ふらっと政治」で、県民が主役の県政実現を目指すと宣言。閣僚や各県知事との連携を深める考えを示し、「行動する知事」をアピールした。 女性副知事の人事同意議案を県議会9月定例会に提案する方針については「人選を進め、できるだけ早く起用できるようにしたい」と述べるにとどめた。
 三反園知事は指宿市出身。指宿高校、早稲田大学を卒業し、1980(昭和55)年テルビ朝日入社。政治記者として政権中枢を取材、テレビ番組のコメンテーターとしても活動した。(木場志郎)

南日本新聞 2016年(平成28年)7月29日 金曜日 2面
三反園鹿県知事就任
ドーム球場に意欲
車座対話、初回は奄美

 鹿児島県の三反園訓知事は28日、就任会見を開いた。知事選の公約で掲げたドーム球場の建設に改めて意欲を示した。マニフェスト(政策綱領)に盛り込んだ車座対話(座談会)は、奄美大島を皮切りに実施する方針を明らかにした。(1面参照)
 三反園知事はドーム球場について、3万人規模の施設を想定し、プロ野球のキャンプなどの誘致を目指す方針を示した。特産品をPRするイベントや各種スポーツも開催でき、「経済効果はものすごい」とアピールした。ハコモノ行政に批判が多いことなどを踏まえ「財源を含めて県民に語りかけ、県民と共に造りたい。なぜ必要か訴えていきたい」と決意を述べた。
 鹿児島市のドルフィンポート敷地(県有地約3万平方メートル)と周辺の利活用については、ガラス張りのシーフードレストランやヨットハーパー構想を示した。ただし、市側と協議する意向も明らかにし、「(構想を)押しつける考えはない」と説明した。一帯の有効活用をゼロベースで話し合うため3月に発足した検討会の在り方については明言しなかった。
 また、熊本、宮崎、大分3県の知事と面会し、災害時の対応や観光面の連携を強化する方針を示し、「相乗効果を生む」と強調した。(浦牛原健)

開かれた県政決意を新たに「け死ん限いきばる」
 鹿児島県知事に28日就任した三反園訓知事は、県職員と支援者の拍手で出迎えられ、初登庁した。「け死ん限いきばる」と決意を新たにして、開かれた県政実現へ一歩を踏み出した。
 県庁玄関での初登庁セレモニーには、県職員のほか、「想いを託します」と書かれた横断幕を手にした反原発の市民グループメンバーらが集まり激励した。知事室に入り、いすに腰掛けると「やるぞ、という感じがする。どんな人でも入ってこれる知事室にしたい」と笑みを浮かべた。初庁議では、各部長らに「意見を出し合い、聞かれた県政にしたい。一緒に新しい鹿児島をつくろう」と訴えた。午後は、各課へのあいさつ回りに繰り出した。国体準備課ではご緒に仕事ができて光栄。国体の成功に向けて頑張ろう」と呼び
掛け、職員一人一人と丁寧に握手を交わした。(森山荊華子)

会見一問一答
人工島2期凍結含め検討
TPPブランド力高める
 28日の三反園訓知事就任会見の主なやりとりは次の通り。
 ─沖縄県の翁長雄志知事が馬毛島(西之表市)を訪問した。米軍普天間飛行場の訓練移転先として、おおさか維新の会も提案している。鹿児島県知事としての受け止めは。
 「政府が(馬毛島への訓練移転を)考えていないと表明している。特段コメントする立場ではない。沖縄の基地負担軽減は、政府、県民、国民みんなで努力しなければいけない」
 ─マリンポートかごしま(人工島)の活用と凍結中の2期事業をどうするか。
 「ドルフィンポートを含め、相乗効果を得て活用するのが基本姿勢。(マリンポートに着岸した)豪華客船からの人の流れなどを事務方と検討していきたい。2期事業の凍結継続も含め検討する」
 ─伊藤祐一郎前知事から何を引き継ぎ、何を変えていくのか。
 「行財政改革を成し遂げたことを評価している。財政再建、行財政改革は引き続きやる。県民の所得が上がるような成長戦略を組み合わせる。私のカラーも徐々に出していきたい」
 ─環太平洋連携協定(TPP)の合意内容の受け止めや評価は。
 「鹿児島のすごい農畜産物をいかに生かすか。ブランド力を高めることに積極的に取り組む。TPPにはクリアしなくてはいけない問題がたくさんある。まだ不確定要素があると考えている」

合言葉はチェンジ
職員700人復唱4度
 合言葉はチェンジ─。就任式で三反園訓知事は、自身の掛け声に合わせて「チェンジ」と叫ぶよう県職員に求めた。式に出席した職員約700人は期待と不安が入り交じった「チェンジ」を復唱した。
 「チェンジ」は三反園知事が選挙明間中、支持者との合言葉として呼び掛けてきたフレーズだ。三反園知事はあいさつの終盤、「私が合言葉は、と言ったら、チェンジと言ってください。お願いします」とリクエスト。恐る恐る返した職員に対し、「もっと県庁の底力を見せて」とさらに大きな声を出すよう促し、職員は計4度「チェンジ」を叫んだ。50代の男性職員は「県政が変わっていく予感はする。慣れない経験で恥ずかしかった」と語る。一方「選挙活動みたい」「知事なりの距離の縮め方なのか」と戸惑いを隠せない職員もいた。(森山荊華子)

秘書課長伊村氏秘書監に長島氏
 鹿児島県は28日、三反園訓知事就任に伴い秘書課長に伊村秀己財産活用対策室長、知事秘書監に長島和広政策調整監兼財政課長補佐を充てる人事異動を発表した。いずれも同日付。
 椎木伸一・前秘書課長と桑代毅彦・前知事秘書監はそれぞれ伊村氏、長島氏と交代する形で、総務部参事(財産活用対策担当)、政策調整監兼財政課長補佐に就く。

写真:知事として初の記者会見に臨む三反園訓知事=28日、鹿児島県庁(北村茂之撮影)

南日本新聞 2016年(平成28年)7月29日 金曜日 24面
脱原発の姿勢強調
具体的道筋示さず
三反国知事就任会見
川内原発を考える

鹿児島県庁で28日あった三反園訓知事の就任会見は、九州電力川内原発(薩摩川内市)に関する質問が矢継ぎ早に飛び交い、関心の高さを印象付けた。県庁前に反原発団体メンバーらが駆け付ける中、三反園知事は九電に運転一時停止と再点検を要請する考えを正式表明、“脱原発”の姿勢を強調した。しかし、具体的道筋は示さず「就任したばかり。いろんな人と意見交換して考えをまとめる」と述べるにとどまった。(1面参照)
 県内外から集まった報道陣は約70人。1時間余りの会見時間のうち川内原発関連の質疑応答が半分を占めた。「原発に頼らない社会をつくる」─。三反園知事は何度もこう述べた。将来的な脱原発を訴えていた伊藤祐一郎前知事との違いを問われると、「全然違う。将来的ではなく、今から目指す」と主張。「廃炉に向けて努力する」とも語った。ただ、知事に原発を止める法的権限はないため、一時停止をどう実現し、九電にどんな点検を求めるか、安全性をどう見極めるかなどについては不透明なままだ。三反園知事は「申し入れと権限とは別問題。県民の不安に応えることがトップ。一番いい方法を探りたい」という。
 県、薩摩川内市、九電とが結ぶ安全協定では、県と同市は原発内に立入調査ができ、住民の安全確保のために必要と判断すれば、適切な措置を講じるよう九電に求めることができる。だが、現時点で三反園知事が原発内の視察や同市と協議を行う予定はないという。
 知事就任から間もなく、川内原発は1号機が10月、2号機が12月に定期検査に入る予定だ。検査終了後、再稼働に同意するかが焦点となるが、三反園知事は「いろんなことを踏まえ判断する」と答えるにとどめた。
 一方、三反園知事が登庁した午前9時半ごろ、県庁前には知事選で候補者一本化のため出馬を断念した平良行雄氏ら、反原発団体メンバーが参集。「私たちの想いを託します」と書かれた横断幕を広げ、新知事への期待の大きさをうかがわせた。(赤間早也香)

写真:就任会見で記者の質問に答える三反園訓知事=28日午前、鹿児島県庁(北村茂之撮影)



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