朝日新聞 2016年(平成28年)7月29日 金曜日 1面
川内停止要請「8〜9月」
三反園新知事が表明
 鹿児島県の三反園訓知事(58)は28日の就任会見で、8月下旬から9月上旬をめどに九州電力に川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)の一時停止を申し入れる考えを表明した。「熊本地震が起き、県民は不安に思っている。その思いに応える」と述べた。
 申し入れの具体的内容については「いろんな方と意見交換して考えをまとめる」と述べるにとどめた。
 九電が増設を計画する同原発3号機については「難しいと思う。福島の事故もあり、県民も国民も新たに原発をつくっていいですよとはならない」と話した。増設は2010年11月に伊藤祐一郎前知事が同意したが、翌年の東京電力福島第一原発事故後、前知事の要請を受けて九電が手続きを
凍結していた。
 三反園知事はまた、近く県庁に設置し、避難計画の課題や原発の安全性を議論する有識者の検討委員会で、1、2号機の廃炉についても検討するとした。
 一時停止の申し入れの表明について、九電は「実際に申し入れがあったわけではなく、コメントしようがない。(申し入れがあれば)発電所の安全性が確保されている状視を丁寧に説明したい」(広報)としている。増設に対する否定的な発言や廃炉の検討表明についても「コメントできない」とした。

朝日新聞 2016年(平成28年)7月29日 金曜日 2面
いちからわかる
鹿児島県の新知事原発止める権限あるの?
法律上の権限なし。要請の方法や九電の対応に注目だ

 ホー先生 「原発のない社会」を訴えた知事が鹿児島県に誕生したのう。
 A 28日に就任した元テレビ局記者の三反園訓さんだね。鹿児島県には全国で1カ所だけ稼働している川内原発(薩摩川内市)がある。それを持つ九州電力に来月下旬にも原発の停止を申し入れる。熊本協震で住民の不安が高まったので、活断層などを再点検すべきだという考えだ。停止となれば、自治体独自の判断による異例のケースになる。
 ホ 知事の権限で?
 A 法律上は、知事に原発停止を命じる権限はない。でも鹿児島県は九電と結んだ協定で、原発に立ち入り調査し、適切な措置を求めることができる。九電は誠意をもって措置することになっている。
 ホ 九電の考えは?
 A 幹部は「正当な理由を示すべきだ」と反発する一方で、社内には「立地自治体の反対を押し切って動かすのはハードルが高い」との声もある。三反園さんが何を根拠に停止を求め、九電がどう対応するのか、注目が集まっている。
 ホ 他の自治体は?
 A 原発が立地する市町村や道県は電力会社と協定を結び、閉じ趣旨の規定がある。再稼働も、同意の権限は明記していないけど、多くが施設の増設や変更の事前了承権を盛り込み、自治体側は再稼働にも準用できると考えている。
 ホ 周辺の自治体は?
 A 協定があっても大半はそこまでの権限はない。東京電力福島第一原発事故後、原発30キロ圏の自治体では避難計画作りが義務になり、立地自治体並みの権限を求める声が高まった。「負担と事故のリスクは同じなのに権限に差があるのはおかしい」と訴えている。
 ホ ホホウ!
 A 原発の停止や再稼働をめぐっては、どこまでの範囲の自治体にどんな権限を認め、どのようにルール化するのか、もっと議論が必要だね。(石川智也)

原発の停止に関わる権限
●原子力規制委員会は原子炉等規制法に基づき、急迫した危険や規制基準の不適合があれば、停止を命じられる
●規制委と経済産業相は電気事業法に基づき、技術的基準の不適合があれば、停止を命じられる
●立地自治体は電力会社との協定で、立ち入り調査後に適切な措置を求められる

原発が止められた過去の主な事例
(肩書などは当時)
1979年 米スリーマイル島原発事故を受け、原子力安全委員会が同型の大飯原発1号機の停止を勧告し、通商産業省が関西電力に停止を求める
2002年 東京電力の長年にわたる原発のトラブル隠しが発覚し、福島県知事と新潟県知事が停止を求める発言。東電は翌年にかけ全17基を停止
2011年 東海地震の想定震源域の真上だとして、菅直人首相が「政治判断」で中部電力に浜岡原発の停止を要請
2016年 地震・津波への対策や避難計画に疑問が残るとして、大津地裁が高浜原発3、4号機の停止を命じる仮処分決定

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朝日新聞 2016年(平成28年)7月29日 金曜日 3面
川内放射線量計増設へ
三反園知事 規制委も後押し

三反園訓知事の就任会見(骨子)
・原発に頼らず、自然エネルギーに変換
・8月下旬〜9月上旬に川内原発1、2号機の一時停止や再点検を申し入れ
・モニタリングポストの増設を検討
・九州電力が計画中の川内3号機増設は困難

 鹿児島県の三反園訓知事が就任会見で、九州電力川内原発(同県薩摩川内市)周辺のモニタリングポストを増設する方針を示した。事故時の避難態勢に不安を抱く住民の声に応えたかたちで、原子力規制委員会も「細かな判断ができる」と設置を後押しする考えだ。▼1面参照
 ポストの増設は、知事が公約としていた避難計画の見直しの一環だ。ポストは原発周辺の放射線量を測るために設置され、原発事故の際の住民避難の判断の指標となる。三反園知事は「性能の良いものをたくさん配置したい」としており、現在の73カ所から100カ所規模に増やしたい考えだ。
 国の指針では、事故が起きた際、5キロ圏の住民はすぐ避難し、5〜30キロ圏の住民は屋内退避した上で、ポストで測定した線量を見て避難するかどうかを国が判断する。毎時20マイクロシーベルトが1日続けば1週間以内に、毎時500マイクロシーベルトに達したら即時避難する。
 鹿児島県によると、川内原発周辺の73カ所のうち5〜30キロ圏には48カ所設置されているが、毎時500マイクロシーベルトを測れるポストは26カ所。必要があれば、高線量まで測れる運搬型のポストを現地に運ぶとしている。だが、地震で道路が寸断された際などに運べるのか、住民の一部には不安の声が出ていた。他県がポストの数を増やしたり、1千マイクロシーベルトまで測れる高線量計を設置したりしていることから、測定網の充実を求める声も上がっていたという。
 三反園知事は28日の会見で、増設分について「500あたりが測れるようなもの」と述べており、高線量まで測れるポストを増やす考えだ。県原子力安全対策課によると、こうしたポストを増やし態勢を充実させる方向で、原子力規制委員会の担当者と打ち合わせを始めているという。
 ポストの設置費と維持費は、国の交付金で全額補助される。規制委の担当者は「現状でも住民避難の判断は可能だが、ポストが多ければさらに細かな判断ができ、望ましい。最も効率的な配置計画を、県と相談して決めたい」と話した。交付金の申請があれば、来年度当初予算に盛り込むという。

川内原発のモニタリングポスト
低線量型25カ所
高線量型35カ所
低、高併設13カ所
73カ所(現在)
新設約30カ所
100カ所規模に
新設は低線量から高線量まで測れる新型などが候補

朝日新聞 2016年(平成28年)7月29日 金曜日 36面
川内3号機増設「困難」
三反園鹿児島知事 就任会見

 28日にあった三反園訓・鹿児島県知事の就任会見の主な内容は次の通り。▼1面参照
 ──公約で九州電力川内原子力発電所の一時停止や再点検を訴えている
 8月下旬〜9月上旬の考えは変わらない。強く申し入れ、九電の対応を踏まえて考えたい。原発に頼らない社会をつくるために、自然・再生可能エネルギー変換したい。
 ──原発の一時停止について知事に権限はあるのか
 県民が不安に思っていることに応えるのがトップ。申し入れることと権限がある、ないは別問題だ。
 ――県民はどんなことを不安に感じていると思うか
 熊本地震があり、原発は本当に大丈夫だろうかという不安がある。何かあった時にどう避難するかも含めて、検証や検討をやりたい。モニタリングポストも性能の良いものをたくさん配置したい。100ぐらい配置できればいいかなと思っている。
 ――原子力問題検討委員会の設置の時期や検討内容は
 人選も非常に重要なこと。時間をかけて人選を進めて、県民の思いに応える検討委員会にしたい。
 ――薩摩川内市の岩切市長は、停止する必要はないとの立場。薩摩川内市との調整や話し合いは
 県知事としての申し入れなので、今のところ考えていない。調整の予定はない。
 ――伊藤前知事が同意した3号機の増設は、東日本大震災を受けて手続きが凍結されている。自紙に戻すことはあるのか
 国民、県民の思いを考えれば、3号機増設は難しいのではないか。
 ――伊藤前知事は、避難計画の実効性と再稼働はリンクしないとの考えだった。どう考えるか
 現場の方の意見を聞き、原発周辺を視察して判断したい。
 ――川内原発は運転開始から30年以上が経過している。廃炉についての考えは
 検討委員会の中で廃炉も含めて検討していくことになると思う。私としても廃炉に向けて努力していく。

写真:初登庁し知事室に着席した三反園訓鹿児島県知事=28日午前、鹿児島県庁、河合真人撮影



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