産経新聞 2010年12月11日
空母艦載機訓練 鹿児島・馬毛島に移転へ 政府検討、米側は難色

 政府は、米軍再編での米空母艦載機「離着陸訓練(FCLP)」を種子島の西約12キロに位置する馬毛島(鹿児島県西之表市)に移転させる方向で本格的に検討に入った。移転先選定は1年半近く遅れ、施設整備期限が2年後に迫る。ただ、地元の反発が避けられない上、艦載機移転先の岩国基地(山口県)から遠いことなどから米側も難色を示しており、対応を誤れば「第2の普天間問題」になりかねない。
 複数の政府筋が10日までに明らかにした。
 馬毛島は土地の大半を「馬毛島開発」(立石勲社長)が所有する無人島で、滑走路も整備されている。自民党政権の平成19年にも移転候補地として浮上したが、地元の反発を受け、実現しなかった。鳩山前政権では、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設先としても取り沙汰された。
 北沢俊美防衛相は今月に入り、FCLPの馬毛島移転を早急に検討するよう省内で指示。その一方で、担当職員に対し、立石氏への接触を禁じ、政治主導で調整にあたる考えを示しているという。
 ただ、立石氏は不動産取引をめぐり法人税法違反の罪で東京地検に起訴されたことが交渉のネックとなっている。
 加えて米側は空母艦載機の新たな拠点となる岩国基地から180キロ以内の訓練地を希望しており、約400キロ離れている馬毛島への移転には強い難色を示しているという。
 しかも、菅直人首相が連携を模索する社民党が、FCLP問題に反発する公算が大きい。FCLPが混迷すれば、米側が米軍厚木基地(神奈川県)から岩国基地に空母艦載機を移転させる計画自体を拒否する恐れもあり、米軍再編の骨格そのものが大きく揺らぎかねない。

【用語解説】FCLP問題
 「タッチアンドゴー」と呼ばれ、空母艦載機に欠かせない訓練。平成18年の日米合意で、米軍厚木基地の空母艦載機FA18など59機を26年までに岩国基地に移転させることが決まり、硫黄島(東京都)で行っていたFCLPについて「21年7月か、その後の早い時期」に移転候補地を選定することが明記された。防衛省は15年に岩国基地に近い広島県大黒神島への移転を検討したが、地元の反対で頓挫。その後は九州近海を中心に候補地を探してきた。

馬毛島の自然を守る会・屋久島