2003年5月26日救助犬訓練報告

 日頃は屋久島のためにいろいろとご尽力いただきありがとうございます。

 屋久島救助犬協会では災害(遭難)対策の一つとして救助犬の育成をしておりますが、屋久島の山岳地帯での救助犬訓練について皆様のご理解をいただきたく、下記の通り報告いたします。

 年月日:2003年5月26日(晴)
 行程:13:00〜16:00平内前岳
    17:00〜17:10Aコープ尾之間店
 目的:環境および他人への馴致。運動能力および体力増進。
 理由:遭難事故が起きた場合に実際に出動する地域で日常の訓練を積むことが必要。
 訓練士:木下大然(訓練およびヤクタネゴヨウ調査)
 ヘルパー:木下香里
 訓練犬:雲居の雁(2歳5ヶ月・2002年10月27日救助犬第1種認定)
 訓練内容:オフリードでの服従訓練、起伏の激しい登山道を歩くことによる障害物通過訓練、実際に遭難があり得る場所での捜索訓練、多くの人に会うことで他人への友好性を高める訓練等。今回から指導手が一切関与せずに(指示も出さずに)遭難者役を発見させる訓練(※)を取り入れる。
 訓練中会った人や動物の反応:山中では他人、シカ、サルには一切会わなかった。シカやサルの糞はたくさんあったが、殆ど気にしていなかった。Aコープ尾之間店の前で「やすめ」の姿勢で待たせていたら、犬好きの子供が2人近寄ってきて撫でていた。近くにいた大人に「救助犬ですから安全ですよ」と声をかけたら安心していた。

 以上です。

※原野捜索は瓦礫捜索と違い、範囲が決っていないか、決っていたとしても面積が広大です。そのような捜索に一番適しているのは、「狩猟犬が一日中楽しそうに獲物を探すのと全く同じように、リラックスして楽しみながら報酬を得るために遭難者を探す」という型式です。アメリカの原野捜索ではこの型式を取り入れています。
 今までやってきたようなテンションを高めておいて「探して」の号令で捜索させる型式だと、集中して捜索行動ができる時間は10分から長くて30分です。これは元々地震、台風、土石流、火山噴火、雪崩などの災害を想定しての訓練で、狭い範囲の瓦礫や雪崩捜索には適しています。これと同じように、原野でも捜索する範囲を決めて号令をかけ、15分から20分捜索させたら一旦切り上げて休息させ、また別の範囲を決めて捜索させるということを繰り返すのが今までの私たち(日本の救助犬チーム)の発想でした。しかし広大な原野(山岳)捜索となると様子が全く違ってきます。そこでもっと持続性のある捜索方法を犬に習得してもらうため、今回から指導手が一切関与せずに(指示も出さずに)遭難者役を発見させる型式を取り入れました。遭難者役からは犬に対して最大の報酬(大好物の食べ物やおもちゃなどでの楽しい遊び)を与えてもらい、「行動中に遭難者を見つけると良いことがある」という認識を犬に持たせ、山行中常に「どこかに遭難者はいないかな?」という気持ちで歩くように仕向けていきます。もちろん並行して瓦礫捜索の訓練も続けていきます。

毒餌による犬の殺害について

 知人の犬が毒餌によって殺害されました。犬の放し飼いをすることも問題ですが、毒餌を撒くことが黙認されたり、それほどの凶悪事件として認知されていないということは大きな問題だと思います。人間の子供が誤って食べたりしたら大変なことになりますから、これは犬の問題だけに留まりません。

 この報告は屋久島の山岳に関わる各関係機関およびガイド関係者に対し、屋久島救助犬協会が自主的に行っているものです。ご質問、ご意見等ございましたら下記までご一報ください。

鹿児島県熊毛郡屋久町安房2627-133
TEL/FAX 0997-46-3714
Mobile 090-9580-7862
E-mail = waken@bronze.ocn.ne.jp
URL = http://yakushima.org/rescudog.htm
屋久島救助犬協会
訓練士・指導手 木下大然

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