******スライド講演会in白川山******
(サイチョウの生態と保護について)

 一湊白川山にて、サイチョウ研究の第一人者、タイ国のピライ・プーンスワッド女史を招いて、サイチョウの生態と保護についてのスライド講演会が開かれました。サイチョウはアフリカ、インド、東南アジアに分布する鳥で46種が知られ、上嘴の基部から頭上にかけて大きな突起物があります。他の鳥と違い雨覆羽(あまおおいばね)がなく、雌は卵を産む時に木の洞に閉じこもり、嘴がでるだけの細いすきまを残して糞や餌のかすなどで中から穴をふさぎます。サイチョウは自分では木に穴を開けることができず、キツツキが開けた穴や、ツキノワグマがミツバチを襲って開けた穴などを利用します。雑食で、特にイチジクの仲間の果物を好み、鳴声や羽ばたく音が非常に大きいです。

 タイには13種が生息し、特に南部のカオヤイ国立公園(2300ku)にはたくさんいますが、最近では伐採などで巣を作る木の洞が少なくなり、また密猟などもあって数が減ってきています。ピライさんたちは既にある洞に手を加えてサイチョウが住みやすくしたり、人工的に巣を作ったりして保護活動を進めています。またスライド講演会で「豊かな森と切り開かれた森」「野生のサイチョウと籠の中のサイチョウ」などを見せ、どちらが良いか比較させるといったことをしています。何よりも驚いたのは、元密猟者を研究のアシスタントとして雇っているということでした。彼らも生活の為にしかたなく密猟していた訳ですから、その生活を保障することで、自然にとっても彼らにとってもプラスになることだと言えるでしょう。

 また、この講演会を企画された画家の手塚賢至さんは、10月にケニアからウガンダにかけて3週間の旅をされ、東アフリカに残る熱帯雨林のスライドを中心に、自然と風物の紹介をしました。手塚さんは優れたエコツアーガイドでもあります。時間不足で今回はできませんでしたが、この旅の続きのスライドが大変素晴しい内容だそうで、またの機会が楽しみです。来年はケニアから屋久島に、ケニアのカカメガの森を守る活動をしている人を招待する予定です。

 今回ピライさんを屋久島に招き、通訳および解説をしてくださったのは、講談社BLUE BACKS「屋久島」でおなじみの湯本貴和博士です。この本の中で博士は次のように書いています。

 屋久島にやってくる皆さんには、単に大型観光バスで島を一周するだけで帰ってほしくない。縄文杉や宮之浦岳山頂という目的地に急ぐだけの旅をしてほしくない。豊かな自然だけに目を奪われて、そこに住むひとたちのくらしをみないままで島を立ち去ってほしくない。そんな気持ちで書いたのが、この本である。

「屋久島」巨木の森と水の島の生態学
湯本貴和著 講談社 \820(税別)

ゆもとたかかず

 1959年、徳島県生れ。1987年、京都大学大学院理学研究科博士課程終了。神戸大学教養部助手、同大学理学部講師を経て、現在、京都大学生態学研究センター助教授。理学博士。10年以上も前から屋久島で植物と動物の相互関係の観察研究を続けて、そのうち延べ3年間は島に住み着いていた。現在はボルネオの熱帯雨林の林冠に研究のフィールドを移している。

屋久島だより(屋久島の素晴しい自然と私たち家族の紹介)   Earthly Company(屋久島エコツアーガイド)